大規模悉皆調査「医療従事者養成施設学生の臨地実習におけるワクチンで予防可能な感染症対策に関する調査」(平成28年10月実施調査)


調査概要 結果 まとめ
J まとめ

本調査を通し、ワクチンで予防可能な感染症に対する免疫確認やワクチン接種が大多数の養成課程で積極的に実施されていることが明らかになった。
以下に、今後取り組むべき課題をまとめる。


@ 全体の5〜7%の課程で、麻疹、風疹、ムンプス、水痘(MMRV)に対する免疫確認を実施していないことがわかった。MMRVは、長期的障害や死に至る重篤な合併症を引き起こすことがある感染症であり、感染力が強いため、学生が発症した場合、周囲の学生や教職員、また実習中であれば患者や医療従事者に二次感染するリスクが高い。感染した学生は感染性がなくなるまで履修停止を余儀なくされる。
よって、全ての養成課程がMMRV感染予防の体制を確立することを強く勧める。
A MMRVは2回のワクチン接種で予防可能である。少なくとも実習開始前までに(理想的には就学前までに)全学生のワクチン接種歴を確認することが望ましい。ワクチン接種を2回受けていれば抗体検査は不要である。本調査を通し、MMRVに対する免疫の有無の判断基準を、「検査会社が規定する陽性値」や「1回のワクチン接種歴」としている課程が一定割合存在することがわかった。しかし、これらの基準をクリアしても感染予防に十分な免疫を持つとは言えない。これらを基準にしている課程ではMMRVに対する免疫があると判断されている学生の中に感受性のあるものがいることが推測できる。
MMRVに対するワクチン接種や抗体検査については、日本環境感染学会ホームページに掲載されている「医療関係者のためのワクチンガイドライン 第2版」と「医療関係者のためのワクチンガイドライン MMRVのQ&A」を参考にしながらMMRVに対する免疫確認を実施するとよい。
B B型肝炎に対する免疫確認を行っていない課程が全体の約14%、免疫のない学生に対してワクチン接種を求めない施設が約17%を占めていた。B型肝炎感染は日常生活においても起こり得るため、ユニバーサルワクチンとして乳幼児期の接種が推奨されている。鋭利物との接触や、血液の飛散が生じる機会が多い医療機関では、B型肝炎感染のリスクは市中に比べてより高い。HBs抗体陰性の学生が針刺しによりB型肝炎ウイルスに曝露した場合、感染するリスクは最大30%にのぼる。
MMRVと同様に全ての養成課程でB型肝炎感染予防の体制が確立されることが求められる。
C B型肝炎感染予防のためには3回(1シリーズ)のワクチン接種を行い、HBs抗体の産生を確認する必要がある。抗体陰性の場合は、さらに1シリーズの追加接種が必要となるためである。2シリーズ接種後も抗体が産生されない場合は、それ以上の追加接種は不要とされている。本調査では、多くの課程がワクチン接種を実施しているものの、HBs抗体価確認はその全てで行われていないことが明らかになった。一部の学生が、HBs抗体陰性のままで実習を行っていることが推測される。
このような課程では、抗体検査によりB型肝炎に対する免疫の確認を行うことが勧められる。
D ワクチンで予防可能な感染症に対する免疫獲得を推進するにあたり、最も大きな課題は費用負担であるようだ。多くの課程で、抗体検査やワクチン接種にかかる費用を学生が全額負担している実態が明らかになった。2017年3月現在、麻疹、風疹、水痘、B型肝炎ワクチンワクチンは定期接種化され、幼少期に無償で接種することができる。ムンプスは、感染症に関する専門学会が要望書を提出するなど、定期接種化に向けた動きや議論が進んでいるところである。
そのため、学生の費用負担は将来的には解決され得る課題であるが、それまでの間の費用負担を軽減する何らかの措置が必要である。受診時間の確保に関しては、就学前までにワクチン接種を受けることができる体制の構築、同時接種など効率的なワクチン接種に対して理解のある医療機関との連携の検討が必要であろう。また、副反応(副作用)への不安や、学生と保護者の理解・協力不足については、VPDに罹患した場合に起こり得る重篤な合併症や、予防接種によって得られる利益、また副反応(副作用)の確率などについて、学生・保護者対して教育機関関係者が丁寧な説明を行い、リテラシーの向上を図ることが求められる。
E いずれの実習施設においてもB型肝炎ウイルス陽性血液や、HIV陽性血液への曝露は起こり得る。
学生に曝露が発生した場合に、速やかに感染予防措置を行えるよう、全実習施設で予防体制を確認することが望ましい。目下、B型肝炎については29.4%、HIVについては29.4%の課程で「どの実習施設においても確認していない」という状況であり、これは速やかに解決されるべきである。
 

ページ上部へ