平成28年度 助成研究の成果発表 菅原 久純, 雨宮 歩, 加瀬 竜太郎, 田中 裕二, 小宮山 政敏

タイトル:[Research article]

Impact of nurse-assisted patient turning at different sleep stages on the quality of subsequent sleep
「異なる睡眠段階で行う体位変換が睡眠満足感に与える影響」

主任研究者

菅原 久純

共同研究者

雨宮 歩, 加瀬 竜太郎, 田中 裕二, 小宮山 政敏

成果発表

第9回日本臨床睡眠医学会学術集会 石川 2017.9.29-10.1

第5回看護理工学学会学術集会 石川 2017.10.14-15

第45回日本集中治療医学会学術集会 千葉 2018.2.21-23

Engineering in Medicine and Biology Society(EMBC), 2018 40th Annual International Conference of the IEEE(発表)

1.背景
 入院患者の約半数に不眠があるといわれている。睡眠時間の減少と睡眠の質低下は内分泌機能、精神症状などに影響を及ぼし、せん妄の誘発やQOLの低下、患者の生命力の消耗につながる。臨床現場においては、体動困難な患者の場合、睡眠中であっても一定時間毎の体位変換が必要であり、そのような看護援助が患者の睡眠の質の低下に影響を与える要因の1つであることが報告されている。そして多くの看護師が睡眠中の患者に体位変換を行った際に、覚醒しても直ぐに入眠できる場合と、覚醒が持続する場合とを経験している。この事から、体位変換などの刺激による影響が少ない睡眠段階が存在するのではないかと仮説を立てた。睡眠中はREM(rapid eye movement)、NREM(non REM)が周期的に繰り返される。NREMには1~3までの段階があり1~2が浅い睡眠段階、3が深い睡眠段階といわれ、睡眠が深くなるに従い覚醒閾値が高まる。REMは覚醒閾値が変動することが分かっているため、今回は閾値が一定と考えられるNREMで検討することとした。睡眠の質の評価には本人の主観的な満足感が大きく影響するため、本研究では主観的指標を用いて睡眠満足感を評価した。
2.目的
異なる睡眠段階で行う体位変換が覚醒後の睡眠満足感にもたらす影響を明らかにする。
3.方法
 睡眠に問題がない若年健常男性14名を対象として、睡眠段階を判断する目的で終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行った。睡眠時間は7時間30分で統一するよう努めた。1夜目は環境適応日とし、2~4夜目の間で非介入日、浅い睡眠段階と深い睡眠段階の介入日を無作為に設定した。介入日にはPSG脳波などの波形からリアルタイムに睡眠段階を判定し、一夜で2回の体位変換を行った。起床後にVAS(Visual Analogue Scale)を用いて睡眠満足感を評価した。解析は非介入日、浅い睡眠段階の介入日、深い睡眠段階の介入日の3群で一元配置分散分析を行った。
4.結果
 VASの結果は非介入日の65.4±15.5mm、浅い睡眠段階の介入日61.7±18.0mm、深い睡眠段階の介入日62.9±17.4mmであり、3群間で有意差は認めなかった。多くの場合で介入前の入室による僅かな音刺激で脳波上覚醒と判定された。
5.結論
 NREM中の異なる睡眠段階で行う2回の体位変換は、起床後の睡眠満足感評価には違いとして現れなかった。睡眠の質については主観的な指標の他にPSG等の客観的な指標も考慮する必要があるため、今後はあわせて検討していく。

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