平成26年度 助成研究の成果発表
1.タイトル:[Research article]
The effect of nutritional intervention for pregnant women on dietary folate and vitamin D intakes: A randomized controlled trial
「妊婦の栄養指導における食事からの葉酸とビタミンD摂取への効果の検証:無作為化比較試験」
2.主任研究者
渡部 紗智, 白石 三恵, 松崎 政代, 日下 桃子, 小林 理沙, 春名 めぐみ
3.成果発表
4.抄録
目的:妊娠期の葉酸およびビタミンDの欠乏は胎児の発育遅延や妊娠合併症の原因となる。そこで、本研究の目的は、妊娠中の女性に食事からの葉酸とビタミンDの摂取に関する栄養摂取の指導の効果を調査することである。
方法:研究デザインは無作為化比較試験とし、2014年11月から2015年11月までに東京の大学病院で実施された。117名の妊娠中期の健康な女性が、無作為に介入群と対照群に割り付けられた。妊娠20週のベースライン、36週のアウトカム評価で、BDHQ(簡易型自記式食事歴法質問票:brief-type self-administered diet history questionnaire)を使用し食事からの栄養素摂取量を算出した。介入群は、20週のベースライン調査の個人の栄養素摂取の結果から、葉酸、ビタミンDを含むいくつかの栄養素摂取の不足について、各栄養素を多く含む食品、料理のレシピについてアドバイスを受けた。各栄養素、葉酸とビタミンD摂取量(μg/1000 kcal)は、BDHQの回答から専用のソフトウエアを使用し算出した。統計解析には、20週のベースラインから36週までの栄養素摂取量の変化量を、介入群と対照群でMann-Whitney U検定を使用し比較、検定した。本研究のプロトコールは、東京大学医学部倫理委員会の承認を受けた。
結果:データ欠損のない84人の対象者(介入群45人、対照群39人)のデータが分析された。妊娠20週での、食事からの葉酸とビタミンDの摂取量(μg/1000 kcal)の中央値(四分位範囲)は、葉酸は介入群で179.0 (147.9−217.8)、対象群で 169.7 (145.8−231.2) 4.8 (3.2−6.5) (p=0.97)であり、ビタミンDは介入群で4.8 (3.2−6.5)、対象群で, 5.0 (3.3−7.3) (p=0.66)であり、両群でベースライン時の摂取量には有意な差は見られなかった。妊娠20週から36週の摂取量の変化量では、葉酸は、対照群より介入群のほうが有意に多かった。[介入群:22.7 (-6.0−63.0) 、対象群: -9.6 (-42.8−41.9), p=0.02]。
しかしながら、ビタミンDの摂取量の変化量については両群で有意な差は見られなかった [介入群:0.7 (-0.7−3.8), 対象群:0.2 (-1.1−2.9), p=0.45]。
結論:妊婦に対する栄養指導の介入により妊娠36週で葉酸摂取量は改善した。ビタミンD摂取量の改善のためには効果的な介入による更なる研究が必要である。