令和2(2020)年度の事故の傾向


総合補償制度「Will」に寄せられた2020年度(令和2年度)の事故と補償の例を紹介します。

医療・福祉系学生の皆さまは、学校生活で直面するリスクに対応するために、「どのような場合に事故に遭遇するのか?補償の目安は金額にしてどの程度なのか?」といった情報を知り、参考にする必要があるでしょう。当該ページの情報を用いて、「Will」にご加入の皆さまが安全に、学生生活を送られることを、願っています。

なお紹介した事故例は、学生さま、また養成施設の特定を避けるために内容を一部変更しています。また2020年度以外の事例も一部で使っています。

1.「Will」の加入数、事故報告数

1−1 2020年度の「Will」の加入状況

総合補償制度「Will」の加入者数は2020(令和2)年度で252,537人になりました。前年度より9,039人の増加になっています。(図1)

【図1】「Will」加入者の増加

「Will」は看護系学生さんの約8割の方にご加入いただいております。実習での事故を補償する「Will1」、学校生活と実習での事故の補償をする「Will2」に加え、プライベートでの傷害事故などの補償を含む、「Will3」と「Will3DX」、また教職員用「Will」を提供し、それぞれご加入人数が増加しています。加入の中心は「Will2」になっています。【表1】

【表1】タイプ別「Will」加入状況

【表1】タイプ別「Will」加入状況
総人数 252,537
教職員 18,339
学生タイプ別 will1 16,669
will2 188,323
will3 22,074
will3DX 4,884
will通信 2,248

加入学科の状況は【表2】のようになっています。看護関連以外の理学・作業療法士、歯科衛生士等、さまざまな医療関係の職種を目指す学生さまにも幅広くご加入、活用いただいています。

【表2】学科別「Will」加入状況

【表2】学科別「Will」加入状況
看護関連(教育形態別) 看護以外の医療及び介護関連(国家資格別)
高等学校(5年・衛生看護・専攻科) 88 理学療法 110 薬剤 15
准看護学校 172 作業療法 82 鍼灸あんま 22
2年課程 120 言語聴覚 25 歯科衛生 89
3年課程 464 臨床検査 49 歯科技工 7
短期大学 15 診療放射線 19 介護福祉 52
大学 247 臨床工学 31 社会福祉 49
総合カリキュラム 12 視能訓練 8 精神保健 32
助産・保険 125 救急救命 21 その他 168
加入数合計 2,120
2021年3月末日現在

1−2 「Will」の事故状況−新型コロナの影響で減少

2020年度に「Will」に報告があった事故の件数は、合計4,661件で、2019年度の8,436件、2018年度の11,126件に比べると、大幅に減少しました【図2】。

【図2】事故報告件数の推移

※この数値は、Willに加入する学生、教職員合計の合計です。

内訳は、【図3】で示した通りになりました。「傷害事故」の報告が全体の43%(2,042件)で最も多くなりました。次いで「賠償事故」が33%(1,532件)、感染補償(学生さまが新型コロナ等の感染症に罹患した場合の補償、他の人に感染させてしまった場合の補償を含む)が13%(609件)、感染検査・予防措置が6%(270件)、「共済制度によるその他の補償」が5%(208件)となりました。

ここでいう「傷害事故」とは、加入者の方がケガをした場合に、補償する事故です。「賠償事故」とは、加入者の方が物の破損や人にケガをさせてしまう等で賠償する必要の生じた事故です。「感染補償」とは、加入者の方が新型コロナウイルス感染症等の感染症に罹患した場合に見舞金を補償する、また二次感染事故の場合に養成施設に賠償責任が生じた場合に、患者さんの検査費用等の諸経費を負担する補償制度です。

「感染検査・予防措置」は臨地実習において、針刺し事故や院内感染の恐れがある場合に、検査費用を補償するものです。「共済制度によるその他の補償」とは、「Will」を運営する一般社団法人日本看護学校協議会共済会の共済制度で、保険では応できない損害に対して一部を見舞金の形で補償するものです。

「Will」はこのような多様な補償を、加入者の皆さまに提供しています。

【図3】事故分類別件数(2020年度)

2020年度の事故報告が、前年比で大幅に減少した理由は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が影響したと思われます。2020年4月以降に、同感染症対策のために緊急事態宣言が計4回発せられました。その際に医療・福祉系養成施設の休校、カリキュラムでの臨地実習の取りやめ、遠隔授業の実施等の動きが広がりました。

そのために学生が学校、実習先で事故に直面する機会が減少し、各種の事故も減ったと、推察されます。

2. 2020年度の感染事故の状況

2−1 感染事故の傾向と事故例

感染事故の状況については、別ページ「令和2(2020)年度・感染見舞金制度の実績と評価(現在作成中)」で詳細をまとめていますので、そちらをご確認ください。

感染事故の事故例を次に紹介します。

事故例

新型コロナウイルス感染症
事故内容 補償金額(円)
同居の母親が発熱し、翌日、看護学生も発熱した。PCR検査を受けたところ、新型コロナウイルスへの感染が確認された。入院できず2週間自宅で待機した。 21,000円
臨地実習中に実習先で患者に感染者が出た後で院内感染が拡大した。実習に参加していた学生が呼吸の苦しさを感じ、発熱した。検査をしたところ新型コロナウイルスへの感染が確認された。臨地実習を中止し、治療のために23日間入院した。 84,000円
インフルエンザ
事故内容 補償金額(円)
大学内でインフルエンザの感染者が出ていた。看護学科に通う学生が発熱し、罹患していると診断された。薬を処方され自宅で療養した。 7,000円
感染性胃腸炎
事故内容 補償金額(円)
どこで感染したか不明だが、嘔吐と下痢の症状が出たため、受診をした。ノロウィルスによる感染性胃腸炎と診断された。症状が続いたので、治療のために4日間入院した。 35,000円

2−2 二次感染事故、感染検査・予防措置の状況

「Will」では、臨地実習中の二次感染(感染の恐れがある場合を含む)が発生した場合に、第三者の検査・予防措置費用、治療費や感染症拡大を防ぐための費用(消毒費用、搬送代)といった実習施設が被る経済的損失等を、1事故100万円を限度に補償しています。こうした「二次感染事故」への対応は、他に類例のない補償として、多くの方に活用いただいております。

二次感染事故は、2020年度に12件、内訳は新型コロナウイルス11件、水痘1件でした。2019年度に15件、内訳はインフルエンザ13件、水痘1件、風疹1件でした。

二次感染の報告件数は少ないですが、一度この事故が発生すると多くの人を巻き込んでしまいます。学生さまは二次感染事故を起こさないように注意が必要でしょう。

二次感染事故の事故例を次に紹介します。(2020年度の報告以外も含む)

事故例

新型コロナウイルス感染症
事故内容 補償金額(円)
介護リハビリセンターで臨地実習を行っていた実習生が、実習4日目に発熱したため病院を受診したところ、検査で新型コロナウイルス感染症に感染したことが分かった。保健所の指示により、介護リハビリセンターの職員、利用者全員のPCR検査を行った。その結果、利用者1人が陽性であった。実習施設ではデイサービスを休業し、消毒等の処置をした。休業などの一部費用補填+消毒代+搬送代+PCR検査代を支払った。 554,000円
学生が発熱し検査の結果コロナと判明した。発熱2日前が保育園での実習の最終日で、そこに出席していた。その日に接触した保育園のスタッフと園児30人が濃厚接触者に該当した。この人たちにPCR検査を行ったが、全員陰性であった。PCR検査のうち、公費以外に負担した医療費実費と、交通費、消毒代、各園児へのお詫び品の代金を支払った。 208,000円
インフルエンザ
事故内容 補償金額(円)
実習終了の翌々日、学生がインフルエンザに罹患していることがわかった。実習した病院の患者とスタッフに抗インフルエンザ薬の予防投与をした。投与は利用者46人、職員40人になった。 300,000円
腸チフス
事故内容 補償金額(円)
夏休み中に東南アジアに旅行した学生が、体調不良のまま帰国後に実習に参加した。熱と下痢が続いたために検査をしたところ、腸チフスへの感染が判明。実習中に濃厚接触した高齢の患者に感染の恐れが出た。その患者を特別病室に隔離し、検査をした。 500,000円

また「Will」では、臨地実習先で学生さんが感染症罹患者と濃厚接触するなどして、感染が広がる恐れのある場合に、「感染の検査・予防措置費用」を、50万円を限度とする実費で補償しています。「Will」はこうした感染の検査・予防措置費用に加えて、傷害事故としての針刺し事故にも対応しています。

感染の検査・予防措置の報告では、2020年度は合計219件、内訳では報告の多いもので上位3つが新型コロナウイルス感染症104件、針刺しでの検査96件、血液・体液ばく露10件でした。インフルエンザは同年1件でした。

2019年度は合計594件、内訳では報告の多いもので上位3つが、インフルエンザ396件、針刺しでの検査116件、血液・体液ばく露が32件でした。

2020年度の二次感染事故で、インフルエンザが急減し、新型コロナウイルスが急増しています。また毎年、針刺しの検査、血液・体液ばく露の事故が上位となっており、これらの事故を警戒すべきでしょう。

感染の検査・予防措置の報告で事故例を次に紹介します。

事故例

針刺し事故
事故内容 補償金額(円)
採血実習中、学生が消毒しようと右手に持っていた針をリキャップしようとした時、左手母指を針刺しした。出血・痛みはなかったが、治療に加えて、肝炎等の検査をした。感染はなかった。 15,000円
血液・体液のばく露
事故内容 補償金額(円)
産婦人科病棟での実習中に、出産の際、手袋をせずに胎盤に触って、血液が手に付着した。産婦さんがC型肝炎キャリアで、肝炎の血液検査をした。 10,000円

3. 2020年度の傷害事故の状況

3−1 傷害事故の全体状況−短期の入院が中心

「Will」で報告された2020年度の傷害事故は2,042件となりました。前年度2019年度の3,062件から、大幅に減りました。減少の理由は、新型コロナウイルス感染症の流行によって、一時休校や遠隔授業が拡がり、登校や移動の機会が減少したためと思われます。

内訳は、【図4】で示したようになりました。「登下校中」の事故が全体の37%(765件)と最も多くなっています。その他は【図4】の順番になりました。

【図4】傷害事故の状況(2020年度)

傷害事故となった方の通院日数から、ケガの程度が推察できます。2020年度の「Will」の学生の通院日数の内訳は、合計1,345件となり、そのうち1-3日の短期の通院が678件(50%)と最も多くなりました。その他の割合は【図5】のようになりました。前述の傷害の合計2,045件より少ないのは、通院日数を申告せず補償した場合があり、教職員を除いて学生のみの数字を計上したためです。

例年、通院日数1-3日のケガが半数以上を占めます。「Will」の傷害事故の特徴として、加入者の学生さまは看護学校が中心で女性が多く、男性にありがちな激しいスポーツやバイクによる交通事故によるケガよりも、捻挫や打ち身等の2-3日の治療通院による軽い傷害事故が多くなっています。そのような背景をもとに、「Will」では1日当たりの通院補償額を高く設定しています。(「Will2」で日額3,000×3日=9,000円)そのために、短期でのケガの補償請求が増えていると思われます。

【図5】通院日数の内訳

3−2 移動時の傷害事故の状況

傷害事故の内訳ではうち、登下校中の移動での事故は765件となりました。(臨地実習先への移動を除く)

事故が発生した移動方法では、自転車による事故が264件(35%)と最も多くなりました。その他は【図6】の順になりました。

自転車の事故では、被害者の重症化や死亡事故が増加し、賠償金も高額化の傾向が全国であります。「Will」にご加入の皆さまの事故でも同じ動きがあります。自転車は手軽で便利な乗り物である一方で、その危険性を深く認識しないまま利用しがちです。自転車による事故、他者による巻き込まれ事故に、学生の皆さまは警戒していただきたいです。

【図6】移動での傷害事故

移動中の事故例を以下に示します。

事故例

自転車での事故
事故内容 補償金額(円)
自転車で走行中に、信号のない交差点で右側から車がきていたため一時停止した。その車が止まったのを確認し走り出した。ところが左折しようとしていた別の車と、左側が接触し転倒、負傷した。擦り傷、打撲等で、延べ10日通院した。 30,000円
徒歩での事故
事故内容 補償金額(円)
通学の際に、立体駐車場で自家用車から降りて、両手に教材を持って学校に行こうと歩き出した。そこで駐車パレットの段差に足がひっかかり滑って後方に転倒した。その際、右足を外側にひねったまま転倒したため、右足首が腫れ、歩行時に疼痛が出た。捻挫と診断された。延べ33日間通院した。 99,000円
原付・バイクでの事故
事故内容 補償金額(円)
十字路の交差点にて一時停止後、渡るときに右から車が徐行してきて、出会い頭でぶつかり転倒。傷病名:打撲、靭帯損傷。62日間の通院となった。 180,000円

3−3 学校で起こった傷害事故の発生状況−体育で発生目立つ

学生の学校内で起こる傷害事故では、全体で562件となり、「授業中・休み時間・放課後」の傷害事故が227件(40%)と、最も多くなりました。その他は【図7】の順になりました。

Will全体の学校管理下の事故件数【図4】の「626件」より合計数が少ないのは、教職員の報告を除いたためです。

体育の授業、部活など体を使った活動での事故が目立ちます。体育の場合に、男女混合でスポーツ競技などを行う場合に、男性の体の方が大きいために女性に負担が加わり、ケガをする例が報告されています。

【図7】学生の学校内での傷害事故

学校内で起こった傷害の事故例を次に示します。

事故例

学内演習中の事故
事故内容 補償金額(円)
採血の学内演習中に、患者役の学生が別の学生に右腕の静脈に注射針を刺された。その直後に痛みとしびれを感じ、抜くように訴えた。すぐに抜針されたが、激痛は収まったものの、しびれが残った。直後に診察を受け、神経損傷と診断され延べ6日通院した。 12,000円
学内演習中の事故
事故内容 補償金額(円)
学内演習中にホットパックを作成していたところ、手を熱湯につけてやけどをしてしまった。延べ7日通院した。 27,000円

3−4 臨地実習中に起こった傷害事故状況

臨地実習での傷害事故では、養成施設から、もしくは学生さまの自宅からの臨地実習先への移動での事故が109件(32%)と最も多く、その他の順は【図8】のようになりました。

【図8】臨地実習における事故

「移動における事故」では、自転車、徒歩が多くなっています。看護学生の教育のための新しいカリキュラムが2022(令和4)年4月から実施されます。そこでは地域医療活動のために、地域における多様な実習が想定され、学生さまの実習先への移動の機会が増えると見込まれます。そのために、移動に際して事故にあわないよう注意が必要となるでしょう。

「実習準備と片付け・器具取り扱い・針刺し」は、学生さま自らの過失による事故です。慣れない医療器具を使う、または状況をよく分からない実習施設で活動することで起きています。事前の器具の使用や、実習活動の学習、注意喚起を徹底することで、事故を抑える可能性が高まると思われます。

「気分の悪化・転倒」では、57件の報告のうち、54件が臨地実習中での貧血やそれによる転倒でした。臨地実習では患者さんの患部や、出血等、日常で見慣れぬ精神的なショックを受けかねない光景を見るために、貧血を起こした、または意識を失うといった例が報告されています。また学生さまは臨地実習で慣れない環境の中で活動し、緊張を続けるために、疲労がたまりやすくなります。それを避けるために、適切な休息と事前の心構えが必要になります。

また「気分の悪化・転倒」のうち3件が、在宅実習で畳敷きの部屋において転んで足をひねりケガをした事故でした。在宅実習で学生さまは畳敷きの部屋で患者さまの介護をしたり、話を聞いたりする機会があります。その時に学生さまが慣れない正座をするために足がしびれ、立ち上がろうとして転ぶ例が報告されています。畳での生活をしていないためでしょう。事前に注意することが必要となります。

患者さま等との接触では、病院実習での衝突に加え、保育実習中での子どもとの接触による事故が報告されています。また患者さまからいきなり殴られる等の事例も報告されています。実習では対象者が予測できない行動をとることが多く、事前の警戒が必要でしょう。

臨地実習での傷害事故例を次に示します。

事故例

器具取り扱いでのケガ
事故内容 補償金額(円)
実習で組織標本を作る課題があった。ミクロトームを扱っている時に、誤って刃に右手薬指を当ててしまい2cm程深く切ってしまった。傷の治療を行い、感染症等の検査もした。 1,2000円
足のしびれによる転倒
事故内容 補償金額(円)
在宅介護実習の訪問中に正座をして、介護対象者の方の話を聞いた。立ち上がる際に、足がしびれて感覚がなくなり、転んでしまった。右足を捻挫し、治療した。 6,000円
患者さんとのトラブル
事故内容 補償金額(円)
病院の実習中、病棟の廊下を歩いている時に、いきなり後ろから面識のない患者に押され、左側のこめかみ辺りを握りこぶしで殴られた。痛みと共に左耳の閉塞感を感じ、耳鼻科で診断と治療を受けた。 12,000円
小児看護実習でのケガ
事故内容 補償金額(円)
小児看護実習中に保育園での実習があり、園児を講演で遊ばせていた。受け持ちの小児が講演の外に走り出し、実習中の学生が追いかけた。その際に学生が急に走ったために、足の肉離れを起こした。 12,000円

4. 2020年度の賠償事故の状況

4−1 賠償事故の状況

「Will」で報告された2020年度の賠償事故の報告は1,532件となりました。前年度の1940件より減少しました。発生場所では、【図9】のとおり、学内、臨地実習、学外の順となっています。

【図9】賠償事故の派生場所

臨地実習での割合は毎年3割前後ですが、今年は22%と減っています。新型コロナウイルス感染症の感染拡大で、医療・福祉系養成施設の活動において臨地実習の機会が大幅に減ったことが影響したと推定されます。

学外・プライベートの賠償事故のうち、55件が学生さま、教職員の加入者さまによる自転車の事故となりました。「Will」では、モーター付きの車両(車、バイク)による賠償事故は補償対象としていません。車両保険での対応をお願いしていますが、それでも自転車による事故が発生しています。自転車での対人事故で、70万円の高額賠償の対人事故も報告されています。気をつけて自転車を利用しましょう。

移動での賠償事故例を示します。

移動での賠償事故

移動での賠償事故
事故内容 補償金額(円)
学生が自転車で歩道を直進中、ポケットの中のスマートフォンがおちそうになったため気を取られ信号待ちの自転車に気づかず、走り続けて衝突し相手が倒れて右手骨折のケガを負わせてしまった。 700,000円

2018年度から、「Will」では交通事故などで、加入者様と被害を受けた方の交渉を代行する示談交渉サービスを行っています。損害保険引き受け会社(東京海上日動火災保険)が交渉を担当するものです。2020年度は利用件数71件、支払件数が57件となり、常に利用があります。【表3】学生さんが、ご自身の賠償の交渉をするのは大変なことです。今後も、ぜひご活用いただきたいと考えます。

【表3】示談交渉サービスの件数

【表3】示談交渉サービスの件数
  事故件数 支払件数
2020年度 71 57
2019年度 73 62
2018年度 65 50

4−2 臨地実習での賠償事故では物品破損が中心

賠償事故では、臨地実習先、患者さん等の賠償相手先、またどのような種類が多いのかに、学生の皆さんは関心を向けられると思います。

臨地実習での賠償事故は2020年度に333件。そのうち、対人事故は4件、残りは対物事故でした。賠償事故は、対物、対人に対象が分かれます【図10】。

【図10】臨地実習での賠償事故の割合

対人事故は毎年、数件となっています。教育現場や実習施設での管理体制が整備され、学生さまの注意も配慮するようになっているためでしょう。ただし対人事故は「Will」の事故全体に占める割合は少ないものの、学生さまのその後の活動や養成施設の教育活動に影響を与えかねないかねないために、注意が必要です。

臨地実習での賠償事故の例を以下に示します。

臨地実習中の対人事故
事故内容 補償金額(円)
臨地実習中に、看護師の詰所内にて、病棟看護師の通行の妨げをしていた同じグループの男子生徒の服の袖を看護実習生が無言で引っ張った。その時、男子生徒は姿勢を崩し、転んで頭を打った。 4,000円
臨地実習中の対人事故
事故内容 補償金額(円)
実習中、昼食準備のために患者をベッドから車いすへ移動させようとした。その際に患者の左前腕が学生の体から離れてしまい、アームレストと患者の側腹部に挟まれる形になってしまった。腕を引き出そうとしたときに擦れて、患者の左前腕に8センチの皮膚剥離の傷を負わせてしまった。 8,000円

4−3 物品破損の種類

◆臨地実習における物品の破損

臨地実習における対物賠償事故(物品の破損)の報告は、2020年度に合計329件となりました。内訳では、水温計・体温計が41件と最も多く、その他は【図11】のようになりました。合計は、実習先施設の物品、養成施設から持ち込んだ物品を合算しています。

【図11】実習で多い破損物

水温計、体温計は水銀式のものが今もあり、それを落とすことによる破損が一定数あります。また医療用精密機器等は単価が高いものが多く、病院等の医療活動で必須となるために、破損した場合は実習先施設に影響を与えてしまいます。破損しないための注意が必要です。

◆患者さんの私物の破損

学生さまが実習で破損した患者さんの所有物の対物賠償事故の報告36件になりました。内訳ではコップの破損が17件と最も多く、その他は【図12】のようになりました。実習で学生の皆さまの活動で触れるものが壊れやすくなっています。

【図12】臨地実習で破損しやすい患者さんの私物

◆養成施設での物品破損

養成施設(学校)での活動における学生さまによる対物賠償事故の報告は、2020年度に919件となりました。物品の対物賠償事故は破損した物品報告の上位10種を記しました。ロッカーとその備品(鏡等)の破損がもっとも多く、164件となりました。その他は、【図13】の通りになっています。学生さまが学校生活で頻繁に接触する機材で、物損事故が多く発生しています。

【図13】養成施設での対物賠償事故

臨地実習での物品への賠償事故の例を以下に示します。

学校での物品への賠償事故
事故内容 補償金額(円)
学校のパソコンを借りて実習記録の作成を行っており、立ち上がって歩き出した時に足にコードをひっかけてノートパソコンが床に落ち、液晶が破損した。修理費を補償した。 86,000円
実習先施設での賠償事故
事故内容 補償金額(円)
学校内で行う実習準備のため、棚から枕を取り出す際、収納されていた枕がガラス戸に引っかかっていた。やや強めに開けたら戸が外れ支えきれずに、床に落下し破損した。 30,000円

日本看護学校協議会共済会
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