第5回 睡眠の基礎知識〜その4

連載「睡眠」

連載「睡眠」
「気持ちいぃ~」目覚めを手に入れたい!

私たちヒトは人生の3分の1の時間は「睡眠」で過ごすといいます。寝ている間に身体及び脳の疲れを休息させ、修復再生させているのです。したがって、健やかな心身を維持するためには眠る必要があるということ。にもかかわらず、日本人の5人に1人は不眠で悩んでいるという調査報告があります。

また、滋賀医科大学精神医学講座(精神科神経科)今井眞氏が2005年、看護師330人を対象に「看護師らの睡眠とミスについての調査」を行ったところ、睡眠と事故との関係が明らかになりました。しかしながら現実は、2009年の日本と韓国の看護師の労働条件調査実態で、「今晩、いつもより早く仕事が終わるとしたら何をするか」という質問に対しては両国共に「睡眠」が最多だったのです。

各調査研究からも分かるように、睡眠はヒト、とくに看護職においては非常に重要な位置を占めるといえます。たかが「眠り」、されど「眠り」。快適な睡眠は、心身の健康、ミスのない仕事、そして人生の3分の1に快適をもたらすといえるでしょう。このページではそんな「睡眠」のメカニズムから上質な睡眠を手に入れる極意を毎回連載していきます。

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一口に「よく眠れない」といっても、その理由は心因性のものから生理的、環境等々様々です。

睡眠は多様性に富んでおり、次のような要因により違いがみられます。原因が分かることで、ある程度は仕方のないことと思え、あまり眠れなことが気にならなくなることもあるかも知れません。

1.年齢による違い

私たちヒトの睡眠は加齢とともに変化していきます。

  1. 新生児期及び乳児期
    睡眠としては未発達で睡眠総量が多く、昼夜にわたって小刻みに繰り返されます。
  2. 幼児期及び小児期
    昼夜のリズムと同調し、昼寝が少なくなって夜に連続した長い眠りが出現します。
    ノンレム睡眠が先行してレム睡眠が後続するという睡眠単位が確立し、深いノンレム睡眠が多くなります。
  3. 思春期及び成年期
    社会的文化的に管理されるようになり、睡眠総量が減少する傾向になり、また個人差が大きくなります。
    一般に深いノンレム睡眠が多いパターンが継続します。
  4. 中高年期
    加齢とともに睡眠の質が劣化し始めます。睡眠時刻のズレ、深いノンレム睡眠の減少、中途覚醒の増加による分断化、昼寝や居眠りの出現などが目立って来ます。

    (図1) 年齢による睡眠時間の推移
  5. …… 総睡眠時間の中でも特にREM睡眠率が減少することに注目!!……

    ⇒ 加齢に伴って睡眠は変化するものであり、高齢の方が若い頃のようにぐっすりと眠れなくなるのは、生理学上も自然のことと思えば気になり方も変わる?

2.男女による違い

男性と女性では、眠りに大きな違いがあります。この違いはホルモンの分泌によるもので、男性はホルモン分泌に周期性がないため、そのことによって眠りに大きな変化は起きません。

女性はホルモン周期によって約1ヶ月のうちに、「睡眠時間」と「眠りの質」が大きく左右されます。また、一生を通じても眠りが大きく変化します。

  1. 女性の睡眠は、分泌されるホルモンバランスの影響を大きく受けています。

    (図2) 女性ホルモンと睡眠

    ……黄体ホルモンが眠気を誘うのは、妊娠・出産という大事な時をむかえやすくし、やたらと動き回ってカラダに悪影響を及ぼさないように、できるだけ休息を与えるため、と考えられています。……
  2. 更年期以後の女性に不眠が増える傾向が顕著です。
  3. 総合的な睡眠の質的内容は男性の方が劣っています。男性の方が睡眠時の呼吸機能が弱いためであり、睡眠時無呼吸症候群が中高年男性に多いのもこのため。また、新生児突然死症候群も睡眠中の呼吸障害と考えられ、やはり男児に多くみられます。

⇒ホルモン周期によって、眠りのリズムが変わる女性は、男性以上に睡眠の問題を抱えやすいと言えます。女性の場合、自分のホルモン周期と眠りの変化を知って、出来るだけ眠りのリズムを崩さないよう心掛けるのが良い睡眠を得るポイント。

3.個人による違い

睡眠時間には個人差があって4〜5時間で元気に活動できる人もいますし、9時間以上寝ないと眠けが強すぎて生活に支障が出る人もいます。実は、睡眠は非常に個人差の大きい生理現象です。

  1. 睡眠時間が6時間未満の者を「短眠者:ショートスリーパー」、9時間以上の者を「長眠者:ロングスリーパー」と呼びます。遺伝的な素因に基づく傾向がありますが、固定されたものではなく、同一人でも変動します。
  2. 短眠者は睡眠効率が良く、深いノンレム睡眠の割合が多いのに対し、長眠者は浅いノンレム睡眠、レム睡眠、中途覚醒の割合が多い。
  3. 短眠者の代表は「ナポレオン:3時間」、長眠者の代表は「アインシュタイン:10時間以上」が有名です。
  4. 一説には、短眠者は外向的であまりくよくよしない「実業家」タイプ、長眠者は内向的で思慮深い「芸術家」タイプと言われています。

【番外─動物の種による違い】

眠らない動物=眠りながら活動できる動物

「眠れない」が気になる私たちヒト。でも、まったく眠らずにいる動物もいます。

カツオやマグロなどの回遊魚やイルカ・オットセイなどの一部の水中哺乳類やカモメなどのように常に海を泳ぎ続けたり、空を飛び続ける動物たちはいつ寝ているのか疑問に思いませんか?

水中や空中で長時間過ごす動物たちは、実は左右の脳を交互に休ませることによって、活動を続けています。つまり、人間のように寝るときに活動を停止するのではなく、泳ぐ、飛ぶといった活動を行いながら、眠ることができるのです。この脳の半分だけを眠らせる睡眠法を半球睡眠といいます。

また、草原に住むシマウマ、キリンといった動物たちも、ぐっすり熟睡しません。ライオンやヒョウなどがいつ襲ってくるかわからないため、浅い眠りにして、もし天敵が現れてもすぐに逃走できるように、立ったまま寝るというテクニックを身につけているのです。

4.季節による違い

動物の中には、熊など冬眠するものがいます。これは、寒くなったからではなく、日が短くなってきたことを体内時計が感じているのです。もちろん人間は、冬眠はしませんが、体内時計の働きにより、日の長さに応じて睡眠の状態が変化しています。

「春眠暁を憶えず」という言葉もある通り、睡眠の量や質は季節によって違ってくるのはよく知られていることでしょう。実際に北海道で行った調査では、夏場の睡眠時間は冬と比べると1時間前後短く、また冬に起床時間が1時間前後ほど遅れるという結果が出ているのです。

  1. 季節により睡眠の内容が変化する理由として、最も大きな要因は日の出と日没の時間差だとされています。私たちの人間の睡眠は生体リズムとしての一面をもっていますが、この日の出と日没の時間が変化することで、睡眠内容が変わってくるのです。
  2. 季節による温度差も睡眠内容が変化する要因。これは室温が低すぎても高すぎても睡眠が障害されることが分かっているからです。

睡眠の四季

⇒ よい睡眠には確かに規則正しい生活は大切。ただし、そこにとらわれ過ぎず、体が求める睡眠の季節による変化にも注意し、柔軟に生活のリズムを調整することが重要。

5.文化による違い

ほとんどの日本人は日中起きて、夜間に眠るというのことがあたりまえだと思っていますが、実は眠りのパターンは、一部の文明社会で生活する限られた人たちだけが実行しているものなのです。睡眠をとる時間や場所は文化によって異なることも覚えておきましょう。

  1. 自然な生理的欲求を抑圧して、文化ないし社会の規律を強制する人為的なものです。
  2. 人間の眠りは、生理的な欲求よりも文化的拘束面の方を優先していると言えます。

⇒ 夜寝て昼間起きなくてはいけない、という既成概念も捨てて見ると、ちょっと楽?

睡眠Topics

看護師さん500人に聞きました

(株)東洋羽毛 神奈川事業所では看護職の皆さんに睡眠に関するアンケートを実施。その結果、看護師さんの睡眠事情が浮かび上がってきました。


資料提供…東洋羽毛工業(株)商品開発部 ホームページ http://www.toyoumo.co.jp/

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