連載「睡眠」

私たちヒトは人生の3分の1の時間は「睡眠」で過ごすといいます。寝ている間に身体及び脳の疲れを休息させ、修復再生させているのです。したがって、健やかな心身を維持するためには眠る必要があるということ。にもかかわらず、日本人の5人に1人は不眠で悩んでいるという調査報告があります。

また、滋賀医科大学精神医学講座(精神科神経科)今井眞氏が2005年、看護師330人を対象に「看護師らの睡眠とミスについての調査」を行ったところ、睡眠と事故との関係が明らかになりました。しかしながら現実は、2009年の日本と韓国の看護師の労働条件調査実態で、「今晩、いつもより早く仕事が終わるとしたら何をするか」という質問に対しては両国共に「睡眠」が最多だったのです。

各調査研究からも分かるように、睡眠はヒト、とくに看護職においては非常に重要な位置を占めるといえます。たかが「眠り」、されど「眠り」。快適な睡眠は、心身の健康、ミスのない仕事、そして人生の3分の1に快適をもたらすといえるでしょう。このページではそんな「睡眠」のメカニズムから上質な睡眠を手に入れる極意を毎回連載していきます。

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第11回睡眠の基礎知識〜その10

前回取り上げた「不眠症」とは逆の症状で、夜間普通に睡眠をとっているにも関わらず、日中に耐え難い眠気があり、仕事や日常生活に支障を来たしてしまう状態を過眠症といいます。ただ寝不足で眠い、というのではなく、大事な場面にもかかわらず、気が付くと「いつの間にか眠ってしまった……」、そんな経験があったら、過眠症かもしれません。
今回は【過眠症】について解説します。

1.過眠症とは

過眠症のチェックは、昼間の眠気の評価測定として、一般的にEpworthの眠気テスト(ESS)を用います。世界中の医療や産業保健の現場で広く使われており、信頼性が高い眠気の程度を判断するテストです。

Epworthの眠気テスト(ESS)

  • 以下の状況で、ウトウトしてしまったり、眠ってしまうことがありますか? 最近の日常生活を思い出して、
    絶対にない:   時々ある:   よくある:   大体いつも:
  • 0から3のうち、最も当てはまる番号1つに○印を付けてください。
  • 質問の中には、最近、あなたが行っていないことがあるかもしれません。その場合はその状況にあったとしたらどうなるか、を考えて答えてください。
Epworthの眠気テスト(ESS)
状況 点数
1. 座って読書しているとき 0  1  2  3
2. テレビを見ているとき 0  1  2  3
3. 公の場所で座って何もしていないとき(たとえば劇場や会議) 0  1  2  3
4. 1時間続けて車に乗せてもらっているとき 0  1  2  3
5. 状況が許せば、午後横になって休息するとき 0  1  2  3
6. 座って誰かと話をしているとき 0  1  2  3
7. 昼食後(お酒を飲まずに)静かに座っているとき 0  1  2  3
8. 車中で、交通渋滞で2〜3分止まっているとき 0  1  2  3

テストの結果は、各設問の○印のつけた得点(0〜3点)を総計し、その合計が10点以下なら正常、得点が高いほど日中の眠気が強く、11点以上の場合は、何かの病気が原因で強い眠気が起こっている可能性があると判断されます。
ただし、この評価はあくまでも、主観的な眠気を判定するもので、睡眠障害の専門の医療機関では、他の客観的な眠気の検査とあわせて、総合的に診断をしています。

では、11点以上の人は、どんな疾病が疑われるのでしょうか?

2.過眠症の種類

代表的なものとして、次の6つの症状が挙げられます。

  1. 睡眠不足症候群
  2. 感情障害(うつ病)に伴う過眠
  3. 睡眠時無呼吸症候群
  4. ナルコレプシー
  5. 突発性過眠症
  6. 反復性過眠症

内今回は、「睡眠時無呼吸症候群」と「ナルコレプシー」について触れてみます。

3.睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)

2003年2月に山陽新幹線で起こった列車緊急停止事故。乗客を乗せた新幹線で、運転士が眠ったまま時速270kmで走らせ続けた不祥事、その原因が睡眠時無呼吸症候群(SAS)だったという、当時は耳慣れない睡眠障害が報道され、にわかにクローズアップされた症状です。有病率は中年男性の場合20%以上とも言われています。それに伴って、耳鼻咽喉科を中心としたSASの検査・治療のできる診療機関も増加し、結果、これまで精神科の医師が主体であった日本睡眠学会の会員数も、耳鼻咽喉科の医師の加入により急増しているほどなのです。


10秒以上続く無呼吸が、一晩7時間の睡眠中に30回以上、もしくは睡眠1時間当たり平均5回以上認められ、且つその一部がノンレム睡眠中に出現する状態。

  1. 閉塞型睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea Syndrome:OSAS)
    身体の構造的要因(肥満・上気道狭小・小下顎・下顎後退など)や、疲労・ストレス、筋弛緩作用のある薬物、アルコールなどの要因により、舌根が沈み、気道が狭窄化し、呼吸しにくい状態になる。
  2. 中枢型睡眠時無呼吸症候群(Central Sleep Apnea Syndrome:CSAS)
    高血圧・虚血性心疾患・心筋症などによる左心機能障害が重症化した場合などに、睡眠中の呼吸障害を合併して引き起こす症状。

 <欧米> 全体:5〜6%  中年男性:20%以上
 <日本> 全体:2〜3%  中年男性:20%以上

強烈ないびき、熟睡感がない、起床時の頭痛・のどの渇き、昼間の強い眠気、抑うつ気分、集中力・意欲の低下、夜間頻尿など。無呼吸=低酸素状態のため、結果的に脳の休息が阻害され、睡眠の質の低下を招いています。

  1. 減量指導による、身体的要因の除去(気道の狭窄化防止)
  2. CPAP(シーパップ)装置、マウスピース装着による上気道の確保


メタボリック症候群に代表されるような肥満化の傾向が、SAS(特にOSAS)の増加に拍車をかけているといわれています。

体重オーバー気味のヒトは、肥満を解消することも大事!!

4.ナルコレプシー

あまり聞き慣れない病名ですが、睡眠医学の世界では古くから認知された病態であり、日本では人口の0.16〜0.59%、欧米では0.02〜0.04%がこの病気にかかっているとされています。ナルコレプシーの原因はまだはっきりとは明らかにされていません。しかしながら、最近の研究では、オレキシンという脳内物質の欠乏が、この病気の発症に関わっていることが指摘されています。また10歳代で発症することが多く、4.3〜7.5%、家族内発症にみられるため、遺伝的な素因も発症に関与すると考えられています。ただし、後天的な要素も大きいという見方も。睡眠学が発展してきたのはこの疾病の解明がベースにあったといっても過言ではないでしょう。

次に挙げる 4大症状 と呼ばれる症状が見られます。


①睡眠発作

日中に耐え難い眠気と居眠りが繰り返し生じる。居眠りの持続は通常20〜30分程度だが、危険な作業の最中や運転中など、通常では考えられない場面でも居眠りをしてしまう。

②情動性脱力発作(カタプレキシー)

怒り、笑い、驚き、喜びなど強い情動変化によって誘発される事が多く、突然筋緊張の低下や消失が引き起こされる症状。全身の力が抜けて座り込む、腕がだらんとする、膝ががくんとするなどが典型的である。

③睡眠麻痺

いわゆる「金縛り」の症状。

④入眠時幻覚

就寝後まもなく、鮮明な現実感のある幻覚の体験や、自分の体が宙に浮いて自分を見下ろしているような幻覚に陥る。


ナルコレプシーの診断は日中の眠気のみではナルコレプシーとは診断できないため、一般的に自覚症状の評価と検査(終夜睡眠ポリグラフ検査と睡眠潜時反復検査)によって行われます。他の眠気をきたす原因の除外も必要となります。また、情動脱力発作など前記の症状は診断材料とはなりますが、必ずしも全ての症状が存在するわけではありません。

ナルコレプシーの治療には、眠気止めの薬や幻覚防止のための抗うつ剤を服用するというのが一般的です。
また症状を緩和させるために、決まった時刻の起床と睡眠を基本とし、規則正しい生活を送りながら出来るだけ睡眠不足を少なくすること。2時間ごとに10分から20分の昼寝を取り適度な睡眠を心がける、出来る限り飲酒や睡眠薬の服用は避ける、などの生活習慣の指導もします。

ナルコレプシーは日ごろから十分に注意して付き合っていけば、普段と変わらない日常生活を送ることが出来ます。

日中の居眠りは、大きな事故の原因にもなります。強い眠気に悩まされている方は、早めにチェックして、専門医に診断してもらいましょう。


睡眠Topics

たかが「いびき」されど「鼾」
誰もがかく可能性のある「いびき」。しかしながら慢性的な「いびき」には、何らかの病気が隠れている場合もあります。また、長期的に「いびき」をかくことによって、さまざまな弊害や「睡眠時無呼吸症候群」に繋がる可能性もありますので注意が必要です。

睡眠中に上気道(のど)が狭くなり、空気がそこを通過するときに振動して音が鳴る現象。

いびきは、いわゆる咽頭(のど:図の赤い○部分)で発生するわけですが、この部分は元々狭い上に、周囲に支える骨がないために潰れやすく、特に息を吸う時に吸い寄せられて一層狭くなり、粘膜が振動して音が鳴るのです。そして、更に進んで完全に閉塞してしまう状態になると、無呼吸状態に陥るわけです。

咽頭は周囲の筋肉により支えられており、眠るとこの筋肉の働きが弱まるため、気道が狭くなり、いびきをかきやすくなります。

「いびき」をかきやすいヒト

  • 肥満(内蔵肥満も含む)
  • 仰向け(上向)で寝る
  • 口呼吸する
  • アルコール(飲酒)をよく飲む
  • 不規則な生活習慣を送っている
  • 疲労(ストレス)が溜まっている
  • あごが小さい(噛み合わせが悪い)
  • 鼻の疾患がある
  • 咽頭扁桃(アデノイド)・口蓋垂(のどちんこ)の肥大と炎症がある
  • 年配(老化)

「いびき」をかきやすい体型・骨格

  • 首が太くて短い
  • 二重あご
  • 下あごが後方に引っ込んでいる(あごが小さい)
  • 団子鼻
  • 鼻が曲がっている
  • 口蓋垂(のどちんこ)が太くて長い
  • 舌が大きく分厚い

日本人では、習慣性のいびきをかく人の割合が、男性で20%、女性で5%とされています。このうちの、10〜20%の人が睡眠時無呼吸症候群であるそうです。

健常者の場合、ある程度規則的ないびきであるのに対して、無呼吸症候群の場合は、一定時間(平均で20秒程度、長い場合は1分程度)いびきが止まり(無呼吸状態)、その後あえ ぐ様な激しい呼吸やいびきが再開されるのが特徴です。


最近では小顔ブームから、さまざまな小顔グッズや美容整形によりあごの小さい人が増え、また柔らかいものばかりを食べることであごが未発達となり、いびきや睡眠時無呼吸症候群に繋がっているケースが増えているともいわれています。

資料提供…東洋羽毛工業(株)商品開発部 ホームページ http://www.toyoumo.co.jp/